研究活動

公益財団法人生協総合研究所 2023年度第4回公開研究会
いま改めて共済のアイデンティティを考える

○ 開催日時
2023年10月16日(月)15:00~17:15
○ 開催会場
来場・オンライン配信併用
○ 参 加 者
177名
(来場28名、オンライン84名、オンデマンド65名)

プログラムと報告者(敬称略)

報告
「共済と保険~その共通性と相違性から共済のアイデンティティを考える」
米山高生(東京経済大学 経営学部 教授)
報告
「生協共済の実践からアイデンティティを考える」
岡田 太(日本大学 商学部 教授)

概要

1.開催趣旨

 現在の協同組合のアイデンティティが確立されてから30年近い年月が経つ中で、社会・経済状況が変化し、株式会社は SDGs、ESG、すべてのステークホルダーに配慮した経営へと舵を切る一方、協同組合では規模拡大や効率を重視した経営を求められる中、両者の違いが分かりにくくなっており、ICAは「協同組合のアイデンティティの再考」を促している。保険・共済事業においても同様の課題が提起され得る状況下において「いま改めて共済のアイデンティティを考える」をテーマとした公開研究会を開催した。

2.報告内容

(1)「共済と保険~その共通性と相違性から共済のアイデンティティを考える」
米山高生 氏 東京経済大学 経営学部 教授

 米山氏は共済と保険を比較するにあたり3つのアプローチ(運動論・組織論・機能論)を概観したうえで、機能論から保険と共済は共通に「たすけあい」の性格を持っているが、共済には内部補助(「たすけあいⅡ」)を内包した商品がある点において相違していると解き明かした。そのうえで内部補助こそ「共済らしさ」が発揮される場ではないかと提起した。最後に「共済のアイデンティティ」を考えることは、その時代に即した「共済らしさとは何か」を考えることであると締めくくった。

(2)「生協共済の実践からアイデンティティを考える」
岡田 太 氏 日本大学 商学部 教授

 岡田氏は経済組織の形態別に共同体⇒互酬、市場⇒交換、政府⇒再分配と整理したうえで、協同組合は社会連帯経済の理念に基づいており「中間組織」の性格を持っていると提起した。そのうえで保険の原理面において共済は市場と同じリスクベースを基本としつつも緩やかなリスク区分が見られるとした。また市場における競争圧力や大規模化から保険との差異が縮小しつつあり、共済のアイデンティティが問われているが、共済らしい取組み(割安な掛金、迅速な共済金支払、生活設計・健康増進・事故防止・防災減災の取組み等)について、組合員・職員の共感を広げていくことが、これからも重要であるとまとめた。

3.参加者の声