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刊行物情報

生活協同組合研究 2012年10月号 Vol.441

特集:水産業復興と協同のネットワーク

 2012年7月28日に宮城県・石巻専修大学で「南三陸・石巻の水産業の現状と復興に向けた協同のネットワーク」と題する意見交換会を,当研究所の企画で開催させていただいた。本特集は,この意見交換会での報告と質疑応答をもとに加筆・整理したものである。

 2011年3月11日(金)の東日本大震災直後,石巻市と南三陸町は最大20mを超える津波に襲われた。石巻市は人口16万人(2011年1月時点)を擁する宮城県第2の都市であった。が,大津波などで3471人が死亡し,476人が行方不明という甚大な犠牲を被った。住宅も多数崩壊し,多数の住民が7927戸設置された仮設住宅での生活を余儀なくされている。震災後,市の人口は1万人減少した。南三陸町も800人を超える方々が犠牲となり,半数近くの方が被災,仮設住宅2195戸が設置された。町人口は1万7300人から2000人以上減少している。

 元来,石巻市は日本でも有数の水産加工業を擁し年間526億円(2009年)の売上高,また魚市場の水揚高もカツオ・イカ類・サバを中心に年間182億円(2010年)を誇っていた。南三陸町では,サケ類・ワカメ・カキ・ホタテなどの養殖業(42億円)を主体として,天然ものを加え(3億円),年間45億円以上(2009年)の売上高があった。ところが,石巻,南三陸ともに津波によって漁港の防波堤は倒壊して岸壁が欠損し,地盤が沈下したため(南三陸町は67㎝,石巻市は114㎝沈下した),漁港への水揚げは不可能となった。さらに漁港に付随する魚市場や水産加工団地,製氷場等あらゆる水産関連の施設も,殆ど壊滅してしまったのである。養殖の筏も多くは流されてしまった。

 このように生活環境と生産現場が甚大な被害を受けた中でも,被災地で様々なつながりが生まれ,復興に立ち上がる人々と協力の動きが生まれた。南三陸町,宮城県漁業協同組合志津川支所では,多くの漁船が失われたため共同で乗船し操業を始めた(高橋源一氏)。また,石巻の水産加工会社約200社は「石巻水産復興会議」をつくっている。この会議の中で石巻の将来構想を考えるワーキンググループは,震災後70日間漁港の清掃作業を共同で行ったことを機に生まれた企業どうしの横のつながりの中で組織されたものという(毛利広幸氏)。木村優哉氏にご説明いただいた「木の屋石巻水産」では,「三陸海産再生プロジェクト」を提唱し,消費者と生産者が直接つながることで「分かち合い助け合う社会」を目指している。また,石巻専修大学の李東勲・石原慎士両准教授は,石巻・気仙沼の商工会議所,石巻・気仙沼の信用金庫と連携して「三陸産業再生ネットワーク」をつくり,被災企業の支援に取り組んでいる。さらに,「みやぎ生活協同組合」はこれまでの産直でのつながりをもとに県内の農業と水産業を支援すべく,「食のみやぎ復興ネットワーク」を組織した(伊藤光寿氏)。みやぎ生協は,この震災を機に生まれた生産者・加工メーカー・消費者のつながりを全国へ広げようとされている。

 漁業・水産加工業の一大拠点であり,これまで水産資源を日本中の食卓へ供給してきた三陸では,震災からの復興に水産業全体の復興・再生が欠かせない。安心して暮らし働くことのできる街の再生なくして,水産業の復興も描けない。そのなかで生協はどのように関われるのか。また被災地で奮闘され,地域社会を担った生協から学ぶことは何か。これらを念頭に,意見交換会は宮城県で甚大な被害を受けた南三陸・石巻の水産業の現状を把握すること,今後の課題を明らかにすることを目的として開催した。本交換会の参加者として,高橋源一,木村優哉,毛利広幸,伊藤光寿,李東勲の各氏からご報告をいただき,ディスカッションでは石原慎士,五十嵐桂樹,藤田孝,高成田享,加藤司の各氏にも加わっていただき,意見を交換した。地域と事業の復興・発展にそれぞれの立場で極めて多忙に活動されておられるなか,ご出席下さった皆さまに深く感謝申し上げる。取材オブザーバーとして2007年度第4回生協総研賞(特別賞)を受賞している気鋭のライター山本明文氏,さらに当研究所から鈴木岳,林薫平(企画,当日進行担当),井内智子(企画,準備担当)の各研究員が本会に参画した。この意見交換会で,安全性と放射能問題への対策,販路や価格の問題,ブランド化の課題,県産品のあり方,魚介そのものの消費減少の問題,さらにはまちづくりの課題など,さまざまな問題を提起していただいた。なお,この特集では,ディスカッションでのご発言について,各位の報告へ一部転用・編集したため発言部分にバラツキが出てしまった。これは編集上の都合としてご了解いただきたい。

 震災後1年半を経て,中央メディアの報道をみれば震災に関連するニュースは随分少なくなった。しかし被災地では,中長期的な視野で復興計画を進める段階に入ったとはいえ,問題はなお山積している。本号の特集は,10月6日の研究所の開催する全国研究集会「東日本大震災2年目の支援課題-生活の協同,地域の連携」(於 東京・明治大学リバティホール)の討議資料に加えることを念頭にしている。復興へ向けた取り組みと近況を報告し,問題・課題を提起した本誌8月号,9月号に続く三部作のとりあえずの掉尾となる。ただもちろん,今後も継続して調査を行うものである。読後の感想,意見を研究所へお寄せいただければ幸いである。

(鈴木 岳,井内智子)

主な執筆者:高橋源一,毛利広幸,木村優哉,伊藤光寿,石原慎士,李 東勲

目次

巻頭言
市民の事業と市民の政府との好循環(庄司興吉)
特集 水産業復興と協同のネットワーク
JFみやぎ・志津川支所からの報告(高橋源一)
石巻商工会議所の取り組みについて(毛利広幸)
木の屋石巻水産からの報告(木村優哉)
みやぎ生協「食のみやぎ復興ネットワーク」について(伊藤光寿)
石巻・気仙沼被災企業の支援(石原慎士,李 東勲)
ディスカッション「三陸水産業復興に向けて」
コラム1 宮城県と石巻の雇用状況
コラム2 東日本大震災を経てくらしの変化をみる
コラム3 宮城県(石巻・南三陸)の水産物をめぐって
支援活動から見えてきたもの②
パル・パラソルカフェから始まる組合員の支援活動(林 美栄子)
日本生協の国際協力の歩みVol.6
生協の協同組合間貿易──賀川豊彦と石黒武重──(藤井晴夫)
残しておきたい協同のことば 第19回
セヴェリン・ヨルゲンセン(鈴木 岳)
本誌特集を読んで
(古山 均・青木博範)
新刊紹介
中川雄一郎・杉本貴志編『協同組合を学ぶ』(林 薫平)
研究所日誌