刊行物
生活協同組合研究 2026年8月号 Vol.607
※刊行後1年未満の刊行物のJ-STAGEでの閲覧は、生協総合研究所会員の方に限らせていただきます。
是非、当研究所の会員にご加入ください。個人会員加入のお申込はこちら 団体会員につきましてはお問合せください。
生協史を多面的に振り返る

2026年は日本生協連の75周年の区切りの年である。今から75年前の1951年3月20日、日本生活協同組合連合会の創立総会が東京大学法文経二号館第29番教室で開催された。なぜ大学の教室で開催されたかといえば無料で借りることができたからだといわれる。それくらい、当時の日本生協連は資金難であった。それから75年を経て、生協は日本の経済や社会の中で、一定の地位を占める存在となった。
生協は多様な側面を持つ組織である。消費者組織であることは確かだが、同時に小売・流通事業体でもあり、社会運動的側面も併せ持つ。いわば多様な顔を持つ生協は、消費、流通、社会運動など多様な論点から論じられてきた。本特集は75周年という区切りの年を迎えるにあたり、それぞれの側面から生協がどのように捉えられてきたのか、これまでの足跡を振り返り、生協の特徴や、時代に応じた変容、その中で社会的に果たしてきた役割を改めて確認する。
北海道大学の満薗勇さんには流通史や消費史という側面から、「消費者」「生活者」という言葉をキーワードに生協の立ち位置を論じていただいた。京都大学の原山浩介さんからは滋賀県における石けん運動を事例に、社会運動としての生協が本来持つ社会的な構想力を歴史的に検討していただいた。関西大学の杉本貴志さんからは「生活協同組合」としての生協に求められる「生活の協同」のあり方を歴史的に検討いただいた。元日本生協連常務理事の斎藤嘉璋さんからはこれまで生協の歴史編纂に関わってきた立場から歴史にどう向き合うべきかの視座を提起いただいた。同志社女子大学の浮網佳苗さんによるイギリス生協史の検討からは、歴史を考えるうえでは欠かせない比較の視点が浮かび上がる。拙稿では日本生協連の原点ともいうべき創立宣言を改めて検討した。2本のコラムでは龍谷大学の尾崎智子さんに共同購入運動の実際を当事者のインタビューから描きだしていただくとともに、日本の生協運動の父ともいえる賀川豊彦とコープこうべとのかかわりについてコープこうべ元常勤理事の薮田高広さんに紹介いただいた。
75年のあゆみのなかで、生協のあり方や立ち位置も変化しつつある。本特集が、歴史を踏まえ、これからの社会における生協が果たしうる役割を展望する一助となれば幸いである。
(三浦一浩)
主な執筆者:満薗 勇、原山浩介、杉本貴志、斎藤嘉璋、浮網佳苗、三浦一浩、尾崎智子、薮田高広
目次
- ●巻頭言
- 「平和とよりよい生活のために」~創立75周年の節目に改めて考える(新井ちとせ)
- ●特集 生協史を多面的に振り返る
- 流通史と消費史のあいだ──日本現代史のなかの生協──(満薗 勇)
- 「石けん運動」のなかの葛藤と構想力をめぐる試論(原山浩介)
- 協同組合運動としての生協──現在求められている社会的な立ち位置や役割を協同組合論から考える──(杉本貴志)
- 生協運動史の編纂に携わって(斎藤嘉璋)
- 生協と帝国主義──近現代イギリスにおける倫理的消費と支配──(浮網佳苗)
- 日本生協連の創立宣言を読み解く──平和とよりよい生活のために──(三浦一浩)
- コラム1 「生協がなかったら,生活できないぐらいに思ってたんだよね,私」─1980年代の共同購入全盛期を内側からみる─(尾崎智子)
- コラム2 生協の父賀川豊彦とコープこうべ(薮田高広)
- ●本誌特集を読んで(2026・6)
- (入江裕子・工藤友明)
- ●研究所日誌
- ●公開研究会(来場・オンライン配信併用)「アジア生協協力基金活動報告会」(9/1)
- ●第35回全国研究集会(2026年11月12日)のご案内
- ●アジア生協協力基金2027年度・助成金一般公募のご案内
